【好きな詩】「せんねん まんねん」まど・みちお
「せんえん まんねん」 まど・みちお
いつかのっぽのやしの木になるために
そのヤシのみが地べたに落ちる
その地ひびきでミミズがとび出す
そのミミズをへびがのむ
そのへびをわにがのむ
そのわにを川がのむ
その川の岸ののっぽのヤシの木の中を
昇っていくのは
今まで土の中で歌っていた清水
その清水は昇って昇って昇りつめて
ヤシのみの中でねむる
そのねむりが夢でいっぱいになると
いつかのっぽのやしの木になるために
そのやしの実が地べたに落ちる
その地ひびきでミミズがとび出す
そのミミズをへびがのむ
そのへびをわにがのむ
そのわにを川がのむ
その川の岸に
まだ人がやってこなかったころの
はるなつあきふゆ はるなつあきふゆ
ながいみじかい せんねんまんねん
<感想>
この詩は地球の自然が同じことの繰り返しなのだということを深く感じさせてくれるものでした。その長さを想像すると、自分の生きている時間が自然の中ではほんの少ししかないこと、自然の大きさに、言葉で言い表すことのできない何か不思議な気持ちになりました。私がこの詩で感じたのと同じ気持ちになったことがありました。それは、上の写真にある「グランドキャニオン」を見たときです。この渓谷は、それこそ千年、万年ととても長い間、雨や川の水によって少しずつ削られてできたものです。その様子を想像すると、地球の大きさと人間の小ささを感じます。「なんか地球ってすごいな。」
作者は「まだ人がやってこなかったころの」と書いています。「まだ」ということは、人がやってきてからは変わってしまったと言いたいのだろうか。自然を開発して破壊したり、地球温暖化などで自然に影響を加えたり。それはどのなのと問いかけてくるようです。この詩は、自然の永遠の繰り返しの中にいることを思い出し、自然の中でともに生きていこうという気持ちにさせてくれました。